ゆっくり加速する日本式エコランに対して、短時間で加速を終わらせ、後は惰性走行するというドイツ式エコラン。
これは市街地などのゴー&ストップが多い場所で日本式より有利だったわけですが、実際にどれぐらいの差があるのか検証してみました。
日本式VSドイツ式
それでは、同じ距離を同じ時間で走って停止するという条件で、日本式とドイツ式を比較してみたいと思います。
また、短距離の例と中距離の例でもそれぞれ比較してみました。
作成した各走行データの概要は以下の通りです。
短距離 |
1.日本式エコラン |
2.最高速を抑えたドイツ式エコラン |
中距離 |
3.日本式エコラン |
4.最高速を抑えたドイツ式エコラン |
5.惰性走行を長くしたドイツ式エコラン |
短距離(224m)での比較
1.日本式エコラン |
ゆっくり加速→惰性走行(燃料カット)→フットブレーキ |
加速平均回転数 |
最高速 |
制動開始速度 |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
1765rpm |
50km/h |
46km/h |
223.9m |
27.8秒 |
9.4km/L |
図1は短距離での基本的な日本式エコランのグラフです。
平均回転数1765rpmで50km/hまでゆっくり加速。そして惰性走行に移りますが、短距離のため惰性走行は2秒ほどしかありません。
そして46km/hという高い速度からフットブレーキでの減速となります。
2.最高速を抑えたドイツ式エコラン |
素早い加速→惰性走行(燃料カット)→フットブレーキ |
加速平均回転数 |
最高速 |
制動開始速度 |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
2120rpm |
48km/h |
29km/h |
223.7m |
27.8秒 |
10.94km/L |
そして図2は短距離でのドイツ式エコランのグラフです。
平均回転数2120rpmで48km/hまで素早く加速。そして惰性走行に移って燃料カット。短距離で加速を終わらせているため、約12秒の惰性走行ができました。
そしてフットブレーキでの減速は29km/hからとなり、グラフは理想的な曲線になっています。
結果は日本式が9.4km/L、ドイツ式が10.94km/Lとなりました。
同じ距離を同じ時間で走ったにもかかわらず、短距離ではドイツ式が圧倒的に有利となりました。
中距離(439m)での比較
3.日本式エコラン |
ゆっくり加速→定速巡航→惰性走行(燃料カット)→フットブレーキ |
加速平均回転数 |
最高速 |
制動開始速度 |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
1765rpm |
50km/h |
25km/h |
438.3m |
46.9秒 |
16.11km/L |
図3は中距離での日本式エコランのグラフです。
平均回転数1765rpmで50km/hまでゆっくり加速し、そのままの速度で定速巡航。ゆっくり加速したため巡航は短く、惰性走行に移ります。距離に余裕があるため惰性走行は約19秒と十分な長さです。
そしてフットブレーキでの減速は25km/hからとなり、グラフは理想的なカーブになっています。
4.最高速を抑えたドイツ式エコラン |
素早い加速→定速巡航→惰性走行(燃料カット)→フットブレーキ |
加速平均回転数 |
最高速 |
制動開始速度 |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
2120rpm |
44km/h |
25km/h |
438.4m |
46.9秒 |
15.42km/L |
そして図4は中距離でのドイツ式エコランのグラフです。
平均回転数2120rpmで44km/hまで素早く加速、そのままの速度で定速巡航。加速が短時間で終わっているため巡航距離が長くなっています。
そして惰性走行に移って燃料カット。フットブレーキでの減速は25km/hからと、図3の日本式と同じになっています。
結果は日本式が16.11km/L、ドイツ式が15.42km/Lとなり、中距離では日本式が有利となりました。
最高速が抑えられるドイツ式は、加速での燃料消費が少ないものの、巡航距離が伸びた分の燃料消費のほうが上回ってしまったようです。
5.惰性走行を長くしたドイツ式エコラン |
素早い加速→定速巡航→惰性走行(燃料カット)→フットブレーキ |
加速平均回転数 |
最高速 |
制動開始速度 |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
2120rpm |
50km/h |
17km/h |
438.8m |
46.9秒 |
15.67km/L |
ドイツ式で何とか日本式を超えられないかと、走り方を変えてみたのが図5のグラフです。
できるだけ惰性走行を長くするために、今度は50km/hまで素早く加速。そのままの速度で定速巡航。そして早目に惰性走行に移っています。
その結果フットブレーキでの減速は17km/hからと、ちょっと現実離れした運転になりましたが、燃費は15.67km/Lと日本式には及びませんでした。
※加速平均回転数は、アクセル踏み始めから加速終了までのエンジン回転数を平均したものです。加速時の最高回転数はこの約1.2倍ほどになっています。
結果
|
日本式 |
ドイツ式 |
短距離 |
9.4km/L |
10.94km/L |
中距離 |
16.11km/L |
15.42km/L
(15.67km/L) |
というわけで、短距離の場合はドイツ式が有利。
中距離の場合は日本式が有利という結果になりました。
ベストな運転法は?
この結果から、どんな時にどんな運転をすればいいのかを考えてみました。
まず、短距離(図6)の場合は巡航区間がないので、加速時の燃料消費量の差がそのまま燃費に影響してきます。
ドイツ式加速では最高速度を抑えられるため、燃料消費も少なくて済みます。
それに比べ、日本式は加速が遅いため、平均速度を同じにするにはさらに高い速度まで加速する必要があります。そして惰性走行する間もなく高い速度からフットブレーキでの減速となるので、多くのエネルギーを捨ててしまうことになります。
逆に中距離(図7)の場合は巡航区間が出てきます。これなら日本式のようにゆっくり加速しても、まだまだ惰性走行する余裕があるので、エネルギーが無駄になりません。
ドイツ式は短距離で加速が終わる分、巡航距離が長くなってしまいます。そしてその燃料消費量を合計すると、日本式を超えてしまいます。
ここで気付いたことは、それぞれ燃費が良かった短距離ドイツ式と、中距離日本式のグラフが非常によく似ていることです。どちらも真ん中より少し手前で最高速度に達し、その前後はゆるやかな曲線になっています。
これから考えると、ただ単に「短距離はドイツ式。中距離は日本式」ではなく、状況に合わせて加速方法を変え、この曲線を距離に応じて伸び縮みさせたような速度変化が一番良いのかもしれません。