CAMPで燃費解析

エアコンの影響

 エアコンをONにすると燃費が悪化する事は皆さんもよく知っていると思います。
だいたい通常よりも10〜20%悪化する事が多いようですが、データ上では実際どのような変化が起こっているのか調べてみる事にしました。
※ここで言う「エアコン」とは、A/CスイッチをONにしてコンプレッサーが作動している状態のことを意味します。


比較内容
1.エアコンONとOFFの状態でアイドリング時の燃料消費量を比較。
2.固定式スロットルを使い、一定速度までの加速データを比較する。
3.一定速度から一定速度までエンジンブレーキで減速した時の走行距離を比較する。
4.取得したデータを使って仮想的な走行データを作り、燃費を比較する。
なお、加速テストは信号のない平地で毎回同じポイントから行いました。


今回のテストで注意したこと
 エアコンは、オート/マニュアルに関わらず、エバポレーター(冷却機)の温度に応じて自動的にコンプレッサーをON/OFFしています。
つまり、A/CスイッチがONであっても常時コンプレッサーが動いているとは限らないわけです。
今回はエアコンの影響を出来るだけ正確に知りたかったので、コンプレッサーONの時間を延ばす為に、エアコンの設定を風量最大、温度設定最低、外気導入、窓は全開としました。
また、停止状態でしばらくA/CスイッチをOFFにし、送風でエバポレーターの温度が上がるのを待ってからテスト再開としました。


比較1 アイドリング
 まず、エアコンON/OFFでアイドリング時の燃料消費量を比較してみました。
図1がその結果です。
エアコンONにすると100rpmほど回転数が上がり、約12cc/min燃料噴射量が増えています。
掲示板等からの情報では、この数値は一般的な乗用車ならだいたい同じぐらいのようです。



なお、Dレンジの項目が2つあるのは、モビリオのクラッチ制御が特殊な為です。
モビリオのCVTは油圧制御クラッチで、普通に停止するとクラッチが切れた状態になります。
そしてブレーキを離すと半クラ状態となり、通常のATのクリープのような状態になります。当然この時のほうが燃料噴射量は増えています。

モビリオと同系のエンジン限定での話になりますが、信号で停止して(クラッチ切)後から車間距離を詰める(半クラ)と、再停止した後も半クラ状態をキープしたままになってしまうので、燃料消費量が増えてしまいます。


比較2 0-50km/h加速テスト
 次に、一定速度までの加速でどれだけの違いが出るのか比較してみました。

 図2、図3は固定式スロットルを使って0-50km/hまでの加速を行ったものです。
エアコンON/OFFごとに各4回ずつ測定しました。

そして、速度と燃料消費量のようすを比較したものが図4です。
これらを見ると、燃料消費量、走行距離ともに大きな差があることが分かります。
燃料消費量はエアコンOFF時で約22cc、ONにするとなんと1.7倍の約38ccにも達します。

 ここまで大きな差が出た原因は、コンプレッサー負荷のためなかなか速度が上がらず、走行距離が大幅に伸びた事だと思います。
もし、もっとアクセルを踏み込んで同じ距離で加速を終えたとしても、過去のテスト結果「一定速度までの加速に必要な燃料は、どんな加速をしてもほぼ同じ」から考えると、燃料消費量はあまり変わらないかもしれません。

比較3 エンジンブレーキ
 エアコンを付けてエンジンブレーキを使うと、体感的にも強く減速するのが分かります。
では実際どれぐらい違うのか?というわけでエンジンブレーキのデータを比較してみました。



 図5は50q/hから20q/hまでエンジンブレーキで減速した時の走行距離を比較したものです。
言うまでもなく、エアコンONのほうが圧倒的に速く減速しているのが分かります。
エアコンOFF時で225m、ONにすると4割減の133mとなります。

エンジン回転数が約200回転ほど高く制御されているせいもありますが、その割合以上に走行距離が短くなっています。
これは、エンジンを回す力に加えて、コンプレッサーを駆動するための力を余分に奪われているという事になります。
通常走行時においても、エンジンブレーキで燃料カットしながら惰性走行できる距離が短くなるという事なので、確実に燃費悪化の原因になります。


比較4 燃費比較シミュレーション
 今回取得したデータで実際に走ってみるとどうなるのか、各データを使って仮想的な走行データを作ってみました。
図6は50km/hまで加速した後20km/hまでエンジンブレーキで減速した時のグラフです。
走行距離を揃えるために、エアコンOFF時のデータには約20mの定速巡航区間を追加しています。



結果は以下の通り

走行距離 所要時間 総消費量 平均燃費 燃費比率
エアコンOFF 416.3m 43.2sec 23.3cc 17.9km/L 100%
エアコンON 415.7m 44.5sec 38.2cc 10.9km/L 60.9%

正直言って、これほどまでの差が付いたのには驚きました。
10〜20%どころか、40%もの差となりました。

といっても、これはエアコンをフルパワーで動かした状態での結果です。
実際の使用では温度設定ももっと高く、風量ももっと少ないので、コンプレッサーの稼動時間も短くなるため、ここまでの差が出ることは無いでしょう。
よく言われている10〜20%燃費悪化というのが妥当なところだと思います。


まとめ
 というわけで、今回のテストでエアコンは明らかに燃費を悪化させるという事が分かりました。
燃費を良くする為にはエアコンの使用を控えるのが一番ですが、同乗者の事を考えると快適性は犠牲にできない所だと思います。

ただ、燃費への悪影響が大きい時間を減らす事ができれば、多少の改善は可能だと思います。
今回の測定結果から見てみると、エアコンをONにした時1分あたりの燃料消費増量分は、アイドリング時で約12cc。しかし加速時になると30ccもの差になってきます。(今回測定値の比率で換算した場合)

コンプレッサーがエンジンと直結で回されている事から考えると、エンジン回転数に比例してコンプレッサーを回すエネルギーも大きくなる事になります。その為このような結果になったと思われます。

加速時などエンジン回転数が高くなる時にコンプレッサーONになると、非常にロスが大きいわけです。
これを防ぐには、A/Cスイッチを手動で操作し、エンジン回転数が高くなる加速時、また冷却効率が悪い低速走行時にスイッチをOFFにすれば、燃費の悪化を減らす事ができると思います。

厳密に考えていくと、設定温度とコンプレッサーON/OFF時間の比率や、速度による冷却効率の違いなど、複雑な要素がどんどん出てきます。
このあたりの話はまだ細かく追求できそうなので、今後の課題としておきたいと思います。